会社辞めて良かった

15年間外資系金融機関で働き、現在はフリーのPMOです。

運か偶然かインサイダー

 

 

私は、ニューヨーク駐在時、現地の証券外務員試験を受けた。

 

シリーズ7と言われる試験で、アメリカ人でも結構落ちる休憩ありの長い試験である。

 

受験者は、約一週間仕事を離れ、研修を受けるのだが、その講師のことが、今でも忘れられない。

 

彼の口ぐせは、以下のようなものだ。

 

「金融取引は、ギャンブルではない。ポジションを取る、というのだ」

 

「君たちは、ポジションを取るな。ポジションは、顧客に取らせるものだ」

 

「一時的に儲けることはあるかしれないが、それを実力と思うな。金融取引で儲けるには、運か偶然かインサイダーが必要だ」

 

今から考えると、とんでもない講師だった。

 

彼の教え方が良かったのか、私は一発で試験に合格することができた。

 

その後も10年以上金融の仕事をしたが、「運か偶然かインサイダー」の言葉は、私の考えに大きな影響を与えている。

 

前置きが長くなったが、今回紹介する「まぐれ」は、「投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか」をテーマにしている。

 

興味深いのは、以下の部分だ。

 

「ほとんどの人は、周りの人が9万ドル稼いでいるときに8万ドル稼ぐよりも、周りの人が6万ドル稼いでいるときに7万ドル稼ぐほうを好む(P31)」

 

「周りより儲けたい」というのは、人間の本質のようだ。

 

会社員時代、私は、富裕層向けに金融商品を販売していたが、顧客から以下のような言葉をよく聞いた。

 

「知り合いが為替ですごく儲けたけど、何か良い儲け話ないの?」

 

顧客の殆どは、資産10億円以上で、それ以上金持ちになる必要はないはずの富裕層だった。

 

しかし、周りの友人などが儲けてしまうと、自分はもっと儲けたいという心理が働き、冷静な判断が難しくなる。

 

私は、顧客にこう言っていた。

 

「儲け話を周りに言う人は多いですが、損したことは余り言わないんですよ」

 

皆様も経験があるかもしれないが、人は失敗を語りたがらない。

 

Facebook などを見ると、「この世は楽園!」かと思えるような良い話だらけだが、現実は色々あるはずだ。

 

これは、人が失敗を言いたがらないせいである。

 

本書の筆者は、数理系トレーダーであり、大学教授でもある。

 

ウォール街の矛盾を風刺し、エコノミストやストラテジストを「芸人(P130)」と読んでいる。

 

「『リスクをとりにいく』のは、だいたい、偶然なのが見えていないからにすぎない(P7)」

 

上記は、私がニューヨークで聞いた、「運か偶然かインサイダー」に近いような気がする。

 

外資系金融機関への転職を考えている人や金融志望の学生に、おすすめの一冊だ。