会社辞めて良かった

15年間外資系金融機関で働き、現在はフリーのPMOです。

インセンティブは自律性を損なう?

 

モラル・エコノミー:インセンティブか善き市民か

モラル・エコノミー:インセンティブか善き市民か

 

私は長らく外資系金融機関に勤めていたため、インセンティブという用語には詳しいつもりである。

 

スタッフはインセンティブ・ボーナスのために働き、毎年1月から2月の支払いが終わると大量の退職者が出ていた。

 

この行動は経済的に見て極めて合理的であり、当たり前と言えば当たり前の動きである。 

 

今回紹介する資料では、「インセンティブは自律性を損なう(P91)」として、外資系金融機関的なインセンティブの与え方について、批判的に論じている。

 

本書はインセンティブについて、「対象者をコントロールしようとする

試みである(P91)」と述べている。

 

資本主義社会に生きる我々にとって、「インセンティブは、依頼者(たとえば雇用者)が代理人(その被雇用者)をコントロールしたいというメッセージをどのように伝えるのか(P91)」がポイントであると本書は言う。

 

企業経営者や人事担当者の人などに、おすすめの一冊だ。

モラル・エコノミー:インセンティブか善き市民か

 

 

予想は当たらなくて当たり前

「好き嫌い」と才能

「好き嫌い」と才能

 

 「好き嫌い」と才能

本書は、各業界の経営者や幹部に経営学者がインタビューを行い、経営理念や組織運営の考えをまとめたものである。

 

印象深かったのは、ある証券会社のストラテジストが言っていた「予想は当たらなくて当たり前(P260)」部分だ。

 

金融機関で働いている人は、基本的に未来の予想が苦手で、それが故に金融機関で働き、顧客にリスクを取らせて利益を得ようとしていると言える。

 

金融の世界で利益の上げ方を知っていると、基本的に周りに教えないため、基本的に金融機関の予想と言うのは当たらない仕組みになっていると言える。

 

各業界の第一人者の意見が確認できる書籍であるため、経営者を目指している人にはおすすめの一冊だ。

 

Kindle版が、読みやすい。

「好き嫌い」と才能

 

 

江戸時代が安定していた理由

 

性表現規制の文化史

性表現規制の文化史

 

本書は、各国における性表現規制の文化史について解説している資料だが、政治、経済的な側面についての分析も散りばめられている。

 

印象深かったのは、「近世の日本の性観念 儒教朱子学)的秩序の導入と家父長制(P192 )」部分だ。

 

本書によると、江戸時代の安定は徳川幕府による産児制限があったという。

 

江戸時代は260年近く続いた人類史上でも珍しいほどの超長期政権で、人口は3,000万人で推移し、多少の変動はあっても、大きく人口が増えたり、減ったりすることはなかったという。

 

「江戸時代には鎖国も行われ、社会が定常状態に入りましたので、産児制限が必要になりました。広く間引きが行われたのがこの時代です。徳川時代の安定は、人口調整によってもたらされたとも言います(P192)」

 

人口が増えている時代は、統治下にある人民を飢えさせないため、別の地域を攻撃して食料を奪ったり、生産手段を略奪する必要があった。

 

戦国時代は正にそれが行われていたわけだが、江戸時代に入って戦闘が行われなくなり、他の場所に攻め込んで財産を奪う手段が失われたことから、産児制限である間引きが一般的になったそうだ。

 

大学で人口学などを勉強している人にとって、本書は参考になるため、おすすめである。

性表現規制の文化史

 

 

ベンチャー・キャピタルが生まれた背景

 

本書は、著名な学者である中野剛志氏による企業論に関する資料である。

 

政治問題についても厳しいコメントをすることで知られる中野氏だが、ビジネス関しても鋭い視線で切り込んでおり、興味深く読むことができた。

 

印象的だったのは、「ベンチャー・キャピタルが生まれた背景(P64 )」部分だ。

 

アメリカ最初のベンチャー・キャピタルとして、1946年に誕生したボストンのARD(American Research and Development)が紹介されている。

 

このADRは、第二次大戦中に開発された軍事技術を民間転用するために設立されたベンチャー・キャピタルであると中野氏は説明している。

 

電子メールなどの技術も、元々は軍事用に使われており、民間転用することでビジネスが拡大した例は枚挙にいとまがない。

 

私はアメリカの金融機関で長く働いていたが、上司が元米軍の特殊部隊員だったこともあった。

 

アメリカが世界最大の経済大国であり続けている理由の一つに、アメリカが常に戦争をしており、実戦経験者が社会の中に一定数存在していることを挙げる人がいる。

 

本書を読んで、その意見はあながち間違いではないのではないかと感じた。

 

ベンチャー・キャピタルで働いている人に、おすすめの一冊だ。

 

薬はリスク?

 

薬はリスク?: 薬を正しく知るために

薬はリスク?: 薬を正しく知るために

 

私は健康優良児のようで、ほとんど薬を飲まずに生活できている。

 

ただ、3月と4月は花粉症がひどくなるため、この時期だけアレルギー鼻炎を防ぐための薬を耳鼻科で処方してもらっている。

 

今回紹介する資料は、薬を飲むことのリスクについて細かい分析を行い、詳細な説明を行っている。

 

印象的だったのは、「薬を逆から読めばリスク(P67)」という部分だ。

 

「薬は、適切な場合に適切な量を使わなければ、効かないばかりか、副作用が出る確率が上がります(P67)」

 

上記の説明はその通りで、健康な人にとって薬は毒物であり、本来であれば薬を飲まずに生活する方が健康的でいられるのだろう。

 

本書は薬の歴史などについても解説しており、紀元前4,000年頃に繁栄したメソポタミア文明では、植物が薬として使われた記録が残っているらしい。

 

薬を飲むことが多い人に、おすすめの一冊だ。

薬はリスク?: 薬を正しく知るために

薬はリスク?: 薬を正しく知るために

 

 

人脈は当てにならない?

 

本書は、経済産業省を退職して独立した筆者によるサバイバル教書である。

 

キャリア官僚の場合、営業などの実務経験がないため、独立後、「何をすればよいのか分からない」状態に陥って、一時は貯蓄が数千円までになり、そこから頭を使って状況を打開してきた筆者の文章には中々の迫力がある。

 

印象深かったのは、以下の部分だ。

 

「一人になったときにそのまま市場で通じる能力とは、結局のところ退職前に当たり前のようにこなしていた仕事にかかわる能力である(P71)」

 

「サラリーマン時代に培った人脈は、おおむね所属していた組織のブランドに強く紐付いているため、一人になったときにあまり頼りにならない(P71)」

 

「俺は人脈が豊富だから、独立してもやっていけるはず」と思っている人が実際に独立したら、誰も相手にされなかったというのはよくある話で、結局は組織のブランドに人脈が付いていることが多いということだろう。

 

仕事にお悩みの方、独立を検討している人に、おすすめの一冊だ。

 

Kindle版が、読みやすい。 

 

部長会で社長選出?

 

「大学改革」という病――学問の自由・財政基盤・競争主義から検証する

「大学改革」という病――学問の自由・財政基盤・競争主義から検証する

 

 日本の大学の競争力低下が叫ばれて久しいが、教授や職員の英語力の低さだけではなく、ガバナンスを含めて組織統治能力に問題があると本書は指摘する。

 

日本の私立大学の場合、教授会によって学長などのトップが選出される仕組みを採用しているところが多い。

 

国公立大学については、10年程前に教授会がトップを選出する仕組みを変えているため、私学の方が古い制度を採用するという不思議な形になっている。

 

民間企業で例えると、部長会で社長を選出するようなもので、その仕組みで世界中の企業と競争できるかというと、どう考えても難しいだろう。

 

海外の大学のやり方が正しいとは限らないが、競争力、マーケティング力などを見ると、日本の大学が劣っていることは確かである。

 

一部の私立大学では、民間企業経験者とトップに据えるところも出てきており、これらの大学が打ち出す方策で、日本の大学業界を変えてほしいものだ。

 

大学で働いている人などにおすすめの一冊だ。

「大学改革」という病――学問の自由・財政基盤・競争主義から検証する

「大学改革」という病――学問の自由・財政基盤・競争主義から検証する